メールマガジンとっとり雑学本舗


第458号(2005年04月12日)「とっとり豆知識」より

 ●和歌の舞台 いなば山

   最近我が家では小倉百人一首がちょっとしたブームです。2月頃、小学
  生の娘が「百人一首を憶えましょうね」と学校からプリントを渡されたの
  がきっかけで、実家にかるたを捜しに帰ったり、大きな声で歌を読みあっ
  たりと、親としては結構大変だったりもします。
  
   さて、その百人一首の中に鳥取県ゆかりのものがあります。
  
   立ち別れ いなばの山の 峰におふる まつとしきかば 今帰りこむ
  
   在原行平(ありわらのゆきひら)の一首です。いなば山は鳥取市国府町
  にある山で、麓には因幡一宮宇倍神社があります。標高250m弱の小高
  い山で、山中には在原行平塚もあります。
  
   この歌は古今和歌集巻8の離別の歌の冒頭に収められており、別れの歌
  の代表格でもあります。
  
   高校時代に「因幡」と「往なば」、「松」と「待つ」の掛詞の例として
  古文の時間に教科書で出会われたかたも多いのではないでしょうか。
  
   行平は斉衡2(855)年正月に因幡国の国守に任ぜられ、この地に赴
  任しています。
  
   因幡国に出発するのに都で別れを惜しんで詠ったとする説、任期を終え
  て都に帰る際、美しい松風・村雨姉妹との別れを惜しんで詠んだという説
  とがあります。
  
   多くの人の心を捉える名歌であるがゆえでしょうか、その後もいなば山
  を素材とした和歌が数多く詠まれています。
  
   ひとつ、ふたつ紹介してみますと、
  
   まず、鎌倉時代初期の歌人で、新古今和歌集の撰者としても知られる藤
  原定家の
  
   忘れなむ まつとなつげそ なかなかに いなばの山の 峰の秋風
  
   鎌倉時代の代表的な歌人でもある後鳥羽上皇の
  
   けふよりや 山の霞の 立ちはなれ いなばの嶺の 夏のあけぼの
  
  などなど、まさに歌枕と呼ばれるにふさわしい場所です。
  
   でも、実際にこの場で詠んだり、この場を見た歌人って少ないんだろう
  なと思うと少し残念な気もします。
                                (O)