メールマガジンとっとり雑学本舗


第589号(2006年10月20日)「きょうの鳥取県」より


 ●沖一峨(おきいちが)鳥取藩御用絵師

   秋風が吹き始めるころ、芙蓉の花が盛りを迎えます。今年も綺麗な花を
  見せてくれていますが、心なしか例年よりも長く楽しませてくれるような
  気がするのは暖かいせいでしょうか。
  
   そう思っていたら、博物館でも芙蓉の花に出会いました。そう、鳥取県
  立博物館で特別展を開催中の沖一峨の作品の中です。江戸時代の画家には
  芙蓉、牡丹、杜若などが愛されていたようですね。
  
   沖家は代々鳥取藩の江戸詰め御用絵師でした。沖一峨(1796〜18
  55)は江戸深川の児玉家に生まれ、沖家の養子となり、沖家7代目とし
  て鳥取藩お抱えの御用絵師となりました。藩お抱えゆえ、いろいろと活動
  に制約もあったはず。現代のように、写真やコピーのない時代ですから、
  御用絵師の公務としては、藩主の肖像画を書いたり、お城の装飾や着物の
  絵を描いたりといった画家・デザイナー的な仕事に加え、幕府に提出する
  お城などの絵図面の複写など様々な作業もあったようです。
  
   そういった中で沖一峨は、幕府絵師伝統の狩野派の枠に閉じこもらない
  チャレンジャーとして、色鮮やかな花鳥画、江戸の町を描いた風景画、山
  水画など幅広くいろいろな絵を残しています。また、当時の江戸の画家の
  間では幅広く社交的に活躍したようです。
  
   鳥取藩第10代藩主池田慶行にも可愛がられていたと見え、戯れに書か
  れたらしい慶行の直筆による一峨の似顔絵まであったりします。藩主に絵
  を教えるのもお抱え絵師の仕事の一つだったようですから、直接会う機会
  もあったことでしょう。
  
   それにしても今回の特別展では、一峨の作品が大量に展示され、鳥取藩
  にはこれほど凄い絵師が居たのだと驚かされる期待以上の内容だったと思
  います。

   沖一峨の作品約90点に加え、一峨に影響を与えた江戸琳派の代表者で
  ある「酒井抱一」をはじめ、「狩野探幽」、「尾形光琳」といった有名絵
  師の作品も含めて全国から約120点の一級品を集めた大展覧会です。鳥
  取県立博物館の収蔵作品に加えて、国内外の各地の美術館などに点在する
  作品もパネル展示を交えて紹介されています。
  
   しかしながら、会場で配布された一覧表を見たところ、どこの所蔵か書
  かれていない作品のほうが数が多いのです。つまり個人蔵の作品というこ
  とです。今回の展示会に当たって新たに日の目を見た個人の収蔵品も多く
  あったそうで、この展示をきっかけに、今後もっと多くの作品が出てくる
  かもしれません。
  
   そう言えば、一峨の作品には、トンボやバッタ、ホタルなどの昆虫もか
  なり精密に描写されています。私が大好きな庭の芙蓉の花、毎年決まって
  大きな毛虫が葉の上に居るのですが、さすがにそこまでは描写しませんよ
  ね。もしもあったら是非鳥取県立博物館までご一報ください(笑)
  
   今回の特別展の会期は11月5日までです。まだの方は是非お出かけく
  ださい。ただ鑑賞するのもよいですが、やはり専門家からいろいろな角度
  で説明を聞くとますます興味が深まります。今回の展示を担当した学芸員
  にる講座がありますので、関心のある方はお出かけください。また、今週
  末にはNHK「新日曜美術館」の番組中の「アートシーン」という全国の
  美術展覧会紹介コーナーで紹介される予定です。
                                (V)
  
    ○特別展 沖一峨(おきいちが)鳥取藩御用絵師
      http://www.z-tic.or.jp/p/museum/exhibition/tokubetuten/4/
  
    ○学芸員解説「(仮)沖一峨について」
      10月28日(土)午後2時〜3時半 県立博物館講堂
      申込不要・聴講無料・定員約40名(先着順)
 
    ○NHK教育「新日曜美術館」
      放送予定日時 10月22日(日)午前9時〜10時
        (再放送)10月22日(日)午後8時〜9時