メールマガジンとっとり雑学本舗


第608号(2007年03月16日)「とっとり豆知識」より

 ●立見峠のおとん女郎

   鳥取因幡の国の伝説の中に、立見峠(たちみとうげ)のおとん女郎狐の
  話があります。
  
   立見峠は、海抜約50メートルの峠で、鳥取県東部にある鳥取市本高
  (もとだか)と宮谷(みやだに)を結ぶ峠ですが、この道は、昔、鹿野往
  来あるいは伯耆(ほうき)中道と呼ばれ鳥取から西のほうに向かう重要な
  道で、たくさんの人たちが行き来をしていたそうです。
  
   今では大きな道路がついていますが、昔からの道も山沿いに残っていま
  す。この昔からの道沿いには通行の安全を祈願した石地蔵(道しるべの地
  蔵)や境界を守る塞(さい)の神(守護神の石碑)が祀られています。
  
   ところで、この峠に住んでいた「おとん女郎」と呼ばれる狐。なぜ「お
  とん女郎」なのかご存知ですか?

   この狐は女狐で「おとみ」という名前で女郎に化けていましたが、「お
  とみ女郎」の名前がいつのまにか「おとん女郎」に変わっていたというこ
  とです。
  
   さて、この「おとん女郎」は、とても変装が上手く、化けて出ては近く
  を通る人たちを騙して困らせていたそうです。そして、困った人たちが何
  度も捕まえようとしましたが、結局、捕まえることが出来なかったそうで、
  例えばこんな話が残っています。

   ・近くを通った商人が、女性に化けたおとん女郎狐をからかってやろう
    としたが、逆に騙されて、田んぼの肥溜めをお風呂と思い、その中で
    身体や顔を洗っていたという話
 
   ・若い青年たちが、おとん女郎狐を捕まえようと色々と手を尽くしたが、
    結局は、逆に騙されて丸坊主にされてしまった話。
  
   また、人を騙す話ばかりではなく、人から恩を受けたら恩返しをしなさ
  い、といった教訓めいた話も残っています。慕われる面もあったんですね。
  立見峠には「おとんじょろ狐伝説の地」と記した石碑があります。
  
   また、おとん女郎狐は、鳥取市にある久松山(きゅうしょうざん)にお
  城があったころ、池田の殿様に仕えていた「桂蔵坊(けいぞうぼう)」と
  いう名の狐の女房だったと言われています。
  
   この「桂蔵坊」も化けるのがうまく、江戸まで3日で行き帰りできる優
  れた術を持っていたため、池田の殿様に大変かわいがられていたそうです
  が、この殿様の御用が終わっての帰り道、播州三日月村で、焼きねずみの
  匂いに誘われて仕掛けられた罠に挟まれて死んでしまったということです。
    
   それを殿様がたいそう哀れみがり、お城のある久松山の中腹に中坂(な
  かざか)神社を造り桂蔵坊を祀ってやったと言われています。
  
   この中坂神社は、桜の花見で知られる鳥取城址の二の丸にあり、今でも
  「桂蔵坊さん」と親しまれ、お参りする人があるとか。今年は、暖冬で桜
  の開花予想日も平年より少し早い3月30日のようですが、お花見ついで
  にお参りなどされてはいかがでしょうか。
  
   この伝説の立見峠。峠を通るときに狐に出会ったら、それは伝説の「お
  とん女郎」狐かも。くれぐれも騙されないよう、ご用心、ご用心!
                                (L)